「星の王子さま」の舞台から見つめる「表現」が持つ可能性

7月より、10月に上演される HOLIDAYS『星の王子さま』の稽古が始まりました。 稽古場となった「いずるば」には、表現とインクルーシブの関係性を改めて考えさせられるメッセージが掲げられており、空間そのものが「学びの場」になっていました。

「いずるば」は、ダウン症のダンサー・りょうたろうさんのお母さまが立ち上げた、芸術を発信するためのスタジオです。今回は、現在制作中の舞台『星の王子さま』を通して得た気づきから、表現の可能性コミュニケーションについて綴りたいと思います。

目次

1. 表現の可能性とコミュニケーションとしてのダンス
2. AI時代に考えるキツネの言葉の意味
3. 「直接体験」を届ける取り組み

1.表現の可能性とコミュニケーションとしてのダンス

HOLIDAYSとご一緒するのは、調布市せんがわ劇場で行われた親子のクリスマスメルヘン2023「オズのまほうつかい」に引き続き2回目です。

毎回、初回の顔合わせ(稽古)で驚かされるのは、表現者の皆さんの即興性柔軟性です。 その日に初めて会ったメンバー同士が、言葉より先に身体で対話し、即興で踊り、そこに音楽が呼応していく。予定調和とはまったく異なる、豊かなコミュニケーションが生まれていきます。

お互いの動きを丁寧に観察し、心を合わせていく過程は、どこか保育の営みにも似ているように感じるのは私だけでしょうか。 子どもたちが遊びの中で自然に呼吸を合わせていくように、ダンサーたちもまた、身体を通して世界を共有していくのです。

『星の王子さま』の演出についても、子どもたちに伝わりやすい構成や表現を、さまざまな角度から真剣に探っていきます。そこには「大人の思い込み」は一切ありません。

「子どもにどう届くか」「本物の表現でどんな場をつくるか」を、丁寧に深める時間が流れていました。

私も僭越ながら、子ども視点の観点から意見を共有させていただきました。ここから生まれる作品は、次年度に向けてすくわくプログラムのパッケージに接続する予定です。保育現場で「本物の表現に触れる体験」を届けていこうと考えています。

2.AI時代に考えるキツネの言葉の意味

「星の王子さま」が世界で長く愛されている作品である理由に、多くの人が「お話の中にある哲学的な側面」を挙げるのではと思います。

どんな時代に読んでも、大人でも子どもでも、読むたびにそこから何か感じ取れることがたくさんあることが、この作品の大きな魅力だと感じます。

毎回感じることが違う……不思議ですね。

「答えがないことが答え」なのかもしれません。

その瞬間に求める「答え」は、同じ人間であってもさまざまで、そのことに気づかされることが「自分らしさ」に触れることなのかなと、そんなふうにも感じます。

近年、デジタル化は驚くほどの速さで進んでいます。 AIに問いかければ、一瞬で「答えらしきもの」が手に入る時代になりました。

私も仕事でAIを活用することがありますが、最短距離で効率よく「答え」に辿り着いているつもりが、場合によってはかえって回り道をしていることも。

その時に、ちょっと悔しくなるのです。

「こんなことなら、自分の頭で、もっと考えればよかった。」と。

AIは使い方によってはとても便利ですし、よりよい活用方法はたくさんあります。

しかし、「直接体験で得られる自分への気づき」は生まれにくい。

便利な「ツール」を使いこなすためには、「自分の感性や判断力」が必要で、それを育てることを大切にしたいなと改めて感じます。

星の王子さまのお話では、きつねは初めて王子に出会った時、こう言います。

「ぼくを飼い慣らしてほしい。」と。

フランス語(原作)では、飼いならすことを「apprivoiser」というそうです。

星の王子様の本の翻訳では、「飼い慣らす」「手なずける」「仲良しになる」「なじみになる」「なつく、なつかせる」など、さまざまに翻訳されています。

それらをひっくるめると、「飼いならしてほしい」というニュアンスが伝わってくるように思います。

ここでいう「飼い慣らす」とは、支配することではなく、「時間をかけ、相手を知り、自分を知ってもらうこと」「その時間を経て、お互いが特別な存在になること」なのだと。

また、キツネはこんなことも言います。

「きみが午後四時に来るなら、三時にはぼくは幸せになりはじめる。」

心が通い合った相手を待つ時間は、決して「無駄」ではなく「豊か」なのだと、キツネが私たちに教えてくれているようにも感じます。

AIは、そうした時間を飛び越えてあっという間に答えへ導いてくれますが、人と人との関係は、飛び越えられない時間の中で、ゆっくりと育っていくのかもしれません。

「大切なものは、目に見えない。」

児童文学は、子どもたちだけでなく、大人にもたくさんのことを伝えてくれているのかもしれません。

3.「直接体験」を届ける取り組み

最後に、保育者の皆さんに「子どもの視点」や「直接体験を通して自分自身と出会う時間」を感じていただける、2つの取り組み(①「星の王子さま」本公演、②インクルーシブと障害理解を深める講座)をご紹介します。

①いずるばフェスティバル2026 響きのあわい HOLIDAYS『星の王子さま』

世界中で愛される「星の王子さま」をモチーフに、ダンスと生演奏で紡ぐ舞台作品。

大人の都合や解釈を押し付けるのではなく、「子どもたちがどう世界を感じているか」という【子ども視点】を軸に作品づくりを行っています。 アコーディオンの生演奏、コンテンポラリーダンサーの身体表現による『星の王子さま』は、言葉に頼らないノンバーバルな表現を大切にしています。

画面越しでは味わえない、五感で体験する芸術に触れてみませんか。

開催日時:2026年10月3日(土)13:00~/17:00~・10月4日(日)13:00~

場所:いずるば

対象:3歳以上

詳細:https://izurubafes.themedia.jp

② まあるい広場×キョウイクデザイン®

「共育のデザイン 障害理解への手がかり」

「障がい」や「発達の特性」を、知識やノウハウといった「頭の理解」だけで捉えていませんか。 本セミナーでは、保育者自身が「体感」を通してインクルーシブの本質を捉え直します。 一人ひとりが生きている世界や感覚をそのまま受け止めるために、交流と対話を通じて学びを深める場です。

開催日時: 2026年8月19日(火)13:30~15:00

場所:ギャラリーcue9(まあるい広場内)

※施設への直接のお問い合わせはご遠慮ください。

対象: 保育者、子どもに関心がある方、福祉に興味がある方など

問い合わせ・お申し込み:contact@kyouikudesign.com

いずれの企画も、体験を通して保育のヒントを持ち帰れる内容になっています。

ご興味ある方は、ぜひ。