「困った行動」の向こう側にあるもの ―発達特性の理解と支援 ―

座っていられない

落ち着きがない

すぐに手が出てしまう など

子どもの姿に、戸惑うことはありませんか。

家庭でも、園や学校でも、子どもの思わぬ行動に大人が困ってしまう場面は少なくありません。

「(私を)困らせないで」

そう言いたくなる瞬間も、きっとあることと思います。

しかし、その行動は本当に「周りの人を困らせるため」の行動なのでしょうか。

今回は、そんな子どもの困った行動の背景にある「発達特性」に合わせた「子どもの支援(かかわり方)」をお話します。

目次

1.発達特性という背景を知る
2.「困った行動」は「困っているサイン」
3.関わり方のポイント

1.発達特性という背景を知る

子どもの行動に悩んでいるとき、

「私の育て方が悪いのだろうか」

「もっと厳しくしないといけないのだろうか」

そんなふうに自分を責めてしまうことはありませんか。

実は、その背景に「発達の特性」が関係している場合があります。

発達障害とは、生まれつきの脳の働き方の違いによって、行動や感じ方、コミュニケーションの仕方に特徴が現れる状態の総称です

代表的なものに、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などがあります。

発達障害は、育て方やしつけの問題で起こるものではありません。

現在の研究では、遺伝的要因を含むさまざまな要素が複雑に関係しながら生じると考えられています。

特定の養育環境が直接の原因になるという科学的根拠は示されていません。

たとえばASDでは、

人とのやりとりの中でのすれ違い

強いこだわり

繰り返し行動

切り替えが苦手

などといった特徴がみられます。

頻度としてはおよそ100人に2~3人とされ、決してめずらしいものではありません。

診断は専門家が丁寧に行いますが、診断の目的は「名前をつけること」ではなく、その子に合った支援や環境を見つけることです。

発達特性を知ることは、子どもの可能性を狭めることではなく、むしろ、その子に合った育ち方を見つけるための第一歩。

少しでも気になることがあれば、一人で抱え込まずに相談してよいのです。

相談することは、子どもを否定することではありません。

むしろ、その子を大切に思っているからこその行動です。

もちろん、困った行動の原因は、「発達の特性」に限定されるものではありませんが、自分の子育てに悩んでいるお母さんお父さんがいらしたら、勇気をもって専門家に相談するなど、前向きな一歩を踏み出してもらえたら嬉しいです。

2.「困った行動」は「困っているサイン」

かんしゃく、パニック、乱暴な行動、指示が届かない様子、強いこだわり。

こうした姿は、発達障害のある子にもない子にも見られます。

子どもの行動の裏には、次のようなメッセージが隠れていることがあります。

要求行動:「やりたい」「してほしい」

注目行動:「見てほしい」「かまってほしい」

逃避行動:「難しい」「やりたくない」

防衛反応:「不安」「自信がない」

行動だけを無理に止めようとすると、子どもはさらに不安になります。

まずは「何に困っているのか」を一緒に考えることが大切です。

大人と子どもでは、見えている景色が違います。

大人から見ると、「危ない」「落ち着きがない」「迷惑になる」と感じることでも、子ども自身は、

座っているより動くほうが楽しい

面白そうなものがたくさんある

何がいけないのか知らない(わからない)

そんな気持ちで行動していることがあります。

発達途中であるからこそ、経験の不足から誤った行動をしていることもあります。

未熟さを責めるのではなく、よりよい行動やコミュニケーションを、ゆっくりと育んでいく視点を持ちたいものですね。

私たち人間は、試行錯誤をたくさんしながら発達していく生き物です。

何事も効率よくスムーズに発達することだけが決して正解ではないことを、大人は改めて認識する必要があるのだと思います。

3.関わり方のポイント

それでは、具体的にどのように対応すればよいでしょうか。

例えば、子どもの様子に合わせて、伝え方を少し変えてみるのはどうでしょう。

「わからない」には、具体的に。

抽象的な指示ではなく、短く、はっきり、やって見せる。

「聞こえていない」には、近づいて。

目を合わせ、名前を呼び、短い言葉で伝える。

「わざと」に見えるときは、注目の仕方を変える。

良い行動ができているときに声をかけよう。

「うっかり」には、確認を。

叱るよりも、「次は何するんだっけ?」と一緒に思い出す。

子どもを無理に変えようとするよりも、大人の関わり方を少し調整することが、結果として子どもの成長を促すことにつながっていきます。

子どもをコントロールするのではなく、適切な関わりを探してみましょう。

私たちは無意識に「問題行動」という言葉を使ってしまいますが、その言葉は子ども自身を「問題」にしてしまいかねない表現でもあります。

「問題行動」は「行動の問題」であって、「問題行動をする子ども自身」が「問題」ではないのです。

大切なのは、何に困っているのか、どうすればうまくいくのかを、一緒に考えることです。

「どうしてできないの?」ではなく、「どうしたらできそうかな?」という一言が、「行動の問題」を解決する一番の近道なのかもしれません。

保護者や保育者との安心できる関係の中でこそ、子どもは挑戦し、学び、育っていきます。

そして私たち大人もまた、子どもと共に成長していく存在なのだと思います。